翻訳の仕事をしていると、言葉そのものだけでなく、見た目にも気を配る場面がよくあります。たとえば、日本語の文書を英語に置き換えるとき。見落とされがちなのがフォントの問題です。
日本語用のフォントで英文を組むと、文字の幅や高さのバランスが崩れて、どこか不格好に見えてしまうことがあります。アルファベットのスペーシングが妙に詰まっていたり、逆に間延びしていたり…。内容は合っていても、どことなく野暮ったい印象を与えてしまうのは、ちょっともったいないです。

もう一つ気になるのが、いわゆる「まぬけクォーテーション」と呼ばれる記号の存在です。英語の引用符やアポストロフィには、向きや形のルールがありますが、日本語環境のまま入力されていたり、DTPで修正されないままだと、「‘’」「“”」が左右の区別のないまっすぐな形になっていることも。細かいようでいて、こうした見た目の乱れは、読み手の印象にじわじわと影響します。

話は少し逸れますが、日本語のカギカッコ(「」)を、英訳時にすべてクォーテーションマークに置き換えるのも注意が必要です。英語の引用符には使い方のルールがあり、「誰かの発言」や「実際の引用」ではない部分まで “ ” に入れてしまうと、文のニュアンスが不自然になったり、何かを揶揄しているような誤解を与えてしまうこともあります。単純な置き換えではなく、文の役割に合わせた表現の工夫が欠かせません。
翻訳とDTP、それぞれに専門性が必要な作業ですが、「英文テキストがあるから、あとはコピペで何とかなる」と思ってしまうと、思わぬ落とし穴も。英語圏の方が見ても違和感のない「整った見た目」までを含めて、私たちは丁寧に対応しています。
気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。伝わる言葉と、伝わるデザインの両方を大切に、お手伝いします。