無類の酒好きのため、ひとたび飲み始めると止まらなくなってしまう。ついつい杯を重ね、帰宅するころにはかなり酔いが回っていることもしばしば。頭では「まっすぐ歩いている」と思っていても、足はあっちこっちにもつれてふらふら。典型的な酔っ払いの足取りに、我ながら失笑してしまうこともある。

酔っ払いがふらふらと頼りない足取りで歩く様子を「千鳥足」と呼ぶが、これは鳥の「チドリ」の歩き方になぞらえた表現だ。一般的な野鳥は前に3本、後ろに1本、計4本の指でバランスをとっているのに対し、チドリには後ろの指がなく、前の3本だけで歩く。そのため、後方で体重を支えることができず、足を内股ぎみに交差させながら一歩一歩前へ進む。スズメのように両足で飛び跳ねるように歩く鳥に比べると、チドリは左右の足を1本の線上に置くようにして歩くため、むしろスマートで、一般的な「千鳥足」のイメージとは少し異なる。

ではなぜ、ふらつく酔っぱらいの足取りが「千鳥足」と呼ばれるようになったのか。

それは、チドリの子育て中の行動に由来するとされている。巣に外敵が近づくと、親鳥はとっさに巣を離れ、翼を半ば広げたまま、左右にふらふらと揺れるような足取りで地面を歩き出す。自らが標的になるような歩きかたをして外敵の注意を引きつけ、雛から遠ざける行動をとる。このときの動きが「千鳥足」の語源とされている(*諸説あり)。

身を挺して雛を守るチドリの親心を思うと、酔っぱらって千鳥足でふらふらと歩く人間のなんとのんきなことか。

そんなことを思いながら、ビールがいっそうおいしく感じられる季節を迎えようとしている今日この頃である。