今年の夏も酷暑でした。東京では、雨が少なく、蝉の声が聞こえないほど暑い日が続いていたため、「今年は秋がなく、夏の次は冬だろう」という声も聞かれました。
暦の上では秋なのに、暑さが9月いっぱい続いたからです。

しかし、10月に入った頃、突然のように涼しい秋風が吹き始めたのには驚きました。諦めかけていた「秋」の訪れです。窓を開けると金木犀の香りがふんわりと漂い、外には彼岸花が咲いていました。友人や家族との間でも、「秋だね、涼しいね」という挨拶が、一週間ほどLINEに飛び交いました。

そんな挨拶の中で、友人が写真で知らせてくれたのが、「酔芙蓉(すいふよう)」の花です。

花に詳しい方ならご存知かもしれません。私はこの時初めてこの花の存在を知りました。「酔」がつかない芙蓉はよく見かけますが、「酔芙蓉」という品種があるとは知りませんでした。「酔芙蓉はただの芙蓉とは違うの?」と思い、ネットで検索をしてみたところ、次のガーデニング情報サイトの記事にたどり着きました。

酔芙蓉は芙蓉の園芸品種で、朝は白、午後になるにつれてピンクに変化する花色がお酒に酔った人のようであることから酔芙蓉と名付けられました。名付け親は、NHKの連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルになった植物学者、牧野富太郎博士です。
酔芙蓉の花が咲き始めるのは早くて7月後半。主には8月~10月が開花時期です。ひとつひとつの花は一日花で夕方にはしぼみますが、夏から秋にかけて休みなく次から次へと開花します。ピンクの色みは、淡い色から時間の経過とともに赤みを増し、夕方近くになると濃いピンクへと変化します。

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https://lovegreen.net/languageofflower/p318017/#:~:text=

牧野博士の粋で素敵なネーミングに、花の色が刻々変化する様子や一日花という生態から、これ以上にふさわしい名はないと感心しました。
諦めかけていた秋の訪れでしたが、この花の便りに、ささやかながらも確かな感動を覚え、秋を実感することができました。

さて、次に私たちはどのような冬を迎えるのでしょうか。
異常気象に翻弄される昨今です。それでも、人の心は、いつまでも季節の移り変わりを受け止める受け皿でありたいと願います。

秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる
藤原敏行 『新古今集』