AIクローラーとは何ですか

AIクローラーとは、人工知能(AI)の学習や利用を目的として、ウェブサイトの情報を自動的に収集するプログラムのことです。
従来の検索エンジンのクローラー(例:Googlebot)が、ウェブサイトの情報を収集して検索結果のインデックスを作成し、ユーザーに最適な検索結果を提供することを主な目的としていたのに対し、AIクローラーは以下のような目的で情報を収集します。

  • 大規模言語モデル(LLM)の学習用データ収集: ChatGPTやGeminiといったLLMは、膨大なテキストデータで学習することで、人間が書いたような自然な文章を生成・理解する能力を獲得しています。一方、AIクローラーは、ウェブ上の記事、ブログ、フォーラム、書籍などの公開されているテキストデータを収集し、これらのモデルの学習用データとして利用します。
  • リアルタイム情報の取得: AI検索エンジンやAIアシスタントが、最新の情報を基に回答を生成するために、ニュースサイトやSNSなどからリアルタイムに情報を収集することもあります。
  • 特定のAIサービスのためのデータ収集: 翻訳サービスや画像認識AIなど、特定の目的を持ったAIサービスのために、ウェブサイト上のテキストや画像を収集することもあります。

従来のクローラーとの違い

従来の検索エンジンのクローラーとAIクローラーの主な違いは、その「目的」にあります。

  • 従来のクローラー(Googlebotなど): 主にウェブページのインデックス作成が目的。これにより、ユーザーが検索したキーワードに関連するページを、検索結果として表示できるようになります。
  • AIクローラー(GPTBotなど): 主にAIの学習が目的。収集したデータは、AIモデルの知識ベースとして組み込まれ、新しいコンテンツや回答を生成するために利用されます。

ただし、近年では、GooglebotもAIの学習目的で利用されることがあり、両者の境界線は曖昧になってきています。そのため、GoogleはAI向けの専用クローラーとして[Google-Extended]を導入しました。

  • Google-Extendedとは、Googleが運営するクローラーで、Geminiモデルやその他のAIアプリケーションの学習に利用されます。

AIクローラーに著作物が利用されないようにする方法はありますか。

AIクローラーにあなたの著作物が利用されないようにする方法はあります。最も一般的な方法は、[robots.txt]ファイルにAIクローラーを拒否する設定を記述することです。 ただし、これはあくまで「お願い」であり、すべてのAIクローラーがこの指示に従うとは限りません。

robots.txtファイルによる拒否

robots.txt]は、ウェブサイトのルートディレクトリに置かれるテキストファイルで、クローラーに対してどのページをクロールして良いか、またはクロールしてほしくないかを指示するものです。主要なAIクローラーの多くは、この指示に従うと表明しています。

主なAIクローラーのユーザーエージェント名

  • OpenAI(ChatGPT): [GPTBot
  • Google(Gemini): [Google-Extended
  • Microsoft(Copilot): [Bingbot][BingPreview
  • Meta(Llama): [Facebookbot

記述例:AIクローラーすべてを拒否したい場合は、以下のように記述します。

User-agent: GPTBot
Disallow: /

User-agent: Google-Extended
Disallow: /

User-agent: Bingbot
Disallow: /

# その他のAIクローラーも追加

この設定は、特定のAIクローラーに対して「サイト全体のクロールを許可しない」という指示を送ります。

注意点

  • robots.txt]は法的拘束力を持つものではなく、あくまで協定のようなものです。悪意のあるスクレイパーや一部のAIクローラーは、この指示を無視してデータを収集する可能性があると考えられます。
  • robots.txt]にAIクローラーを拒否する設定を追加しても、Google検索など従来の検索エンジンのクローラー(Googlebotなど)は影響を受けません。
  • WordPressなどのCMSでは、プラグインを使って簡単に[robots.txt]を編集できる場合があります。

その他の対策

robots.txt]以外にも、いくつかの対策があります。

noindexタグとnosnippetタグの利用
  • noindex: ページのクロールとインデックス登録を拒否するタグです。AIの学習対象から除外される可能性が高まります。
  • nosnippet: 検索結果の概要(スニペット)表示を拒否するタグです。これにより、AIがコンテンツの要約を生成するのを防ぐことができます。

これらのタグは、特定のページやコンテンツに対して細かく設定したい場合に有効です。

著作権表示と利用規約の明記

  • ウェブサイトのフッターや利用規約ページに、著作物のAI学習利用を禁止する旨を明記します。
  • これにより、法的な根拠が強まり、無断利用された場合に著作権侵害を主張しやすくなる可能性があります。

著作権法との関係

日本の著作権法では、AI開発のためのデータ収集は、特定の要件を満たす場合に限り、著作権者の許諾なく行える場合があります(著作権法第30条の4)。これは、「著作物の表現された思想または感情を自ら享受し、または他人に享受させることを目的としない」利用と見なされるためです。しかし、AIが生成した結果が既存の著作物と似ていたり、AIの学習目的とは異なる利用(例えば、AIの学習を目的とせず、単に著作物を複製・公衆送信する場合)には、著作権侵害となる可能性があります。

まとめると、AIクローラーに著作物を利用されたくない場合は、まず[robots.txt]に拒否設定を記述し、その上で利用規約などで明確に意思表示することが、現状で最も現実的な対策と言えます。