過去、当ブログでも機械翻訳の種類などを解説していますが(機械翻訳の種類と性質)、今回はよりお客様視点でのお話しです。
ここで言う機械翻訳とは、Google翻訳、DeepL、ロゼッタ(T-400)など主にコンテンツ/テキストについての利用の場合で、最近ではChatGPTなども同様に使用されている方も多いかと思います。


実際、これら機械翻訳が有効に活用出来ているケースも多くあります。
英語に不慣れな方が受け取った英文メールの内容を把握する、技術情報が主な製品仕様書の内容を海外の方と共有する、などなど。
しかし新たなツール/技術にありがちな傾向として、「これを使えば〇〇(翻訳)は全て解決」と思われがち(そのような印象で宣伝されている)ですが、やはりその様なことはそうそう無く、機械翻訳も万能ではありません。
以下、その事例を何点か紹介します。

例えばキャッチコピー。日本語でさえ労力/費用をかけて作成した素晴らしいキャッチコピーが、機械翻訳でよりネイティブに刺さる文章を訳出できるはずの無いことは、容易にご理解いただけると思います。
仮に流行りのChatGPTであればある程度可能かもしれません。 ですが精度の高いアウトプットは相当な事前準備やインプットの工夫が必要、また最終アウトプットも補正や手直しが必要です。

これと似たケースでは日本語からの訳出での主語の問題があります。
ご存知の通り日本語では多くの文節で主語を文脈で理解させる場合があります。これら主語が明確に表記されてない文節で、機械翻訳が隠れた主語を把握して訳出することは困難です。 仮にこれを解決するには、翻訳前の日本語の各文節を明確な主語を含めた文章に書き直す、などの事前準備や、機械翻訳/ツールに多くの類似文章をインプットして学習させるなどの大幅なチューニングが必要となり、結果これらは従来の翻訳者による翻訳と比べ、精度/費用対効果ともに疑問が残ります。

また専門的な情報としては、機械翻訳は統計的に一定の割合でミス/誤訳が発生するとも言われています。 そして最近の機械翻訳は表現が流暢なため、逆にこれらのミス/誤訳を発見し辛い傾向があります。 これらのミス/誤訳の発見のための確認作業、また文体/テイスト合わせなどの訳出の補正/修正など後工程を考慮すると、これも精度/費用対効果ともに機械翻訳利用の効能に大いに疑問が残ります。
(因みに現状では一般的に職業翻訳者は、他人(機械)の訳出の確認をとても嫌う傾向があり、またその費用も新規翻訳に比べ割高になります)

結論として、機械翻訳は翻訳対象の種類/内容、或いは期待される成果によって有効活用の是非が大きく分かれ、その見極め次第では精度/費用ともに大きく期待を損ない、場合によってはビジネス的な信頼を傷つけ、予期せぬ工数や費用がかかる、などのリスクさえある事を理解いただければと思います。

アラヤでは一部機械翻訳の代理店も行いつつ、販売目的と言うよりは、むしろお客様においての機械翻訳利用の見極め、従来の翻訳者による対応との住み分けを判断するお手伝いに重きを置いています。 これらに関連の課題をお持ちであれば是非お声がけください。