こんにちは、デザイナーのHです。ロシアといえば、子供の頃に読んだ絵本「おおきなかぶ」を思い出します。(おおきなかぶ 福音館書店/A・トルストイ 再話/内田莉莎子 訳/佐藤忠良 画)

そして「おおきなかぶ」といえば「うんとこしょ どっこいしょ」。この代名詞ともいえるかけ声は、原語(ロシア語)ではどのような表現なのでしょうか。
ウィキペディアによれば「引っぱって引っぱって、でも抜くことができませんでした。(日本語直訳)」となるらしい。「引っぱって引っぱって」という箇所が「うんとこしょ どっこいしょ」と訳されたようです。力強さとリズムが調和した訳、物語の世界観を深く想像することによって生まれた言葉だと感じます。

そして、おじいさんの赤っぽい鼻と白いあごひげに彫りの深い顔、スカーフをかぶったおばあさんと孫娘の姿、一見、海外の作家によって描かれた挿絵だと思うかもしれませんが、実はそうではありません。
言わずと知れたことですが、挿絵はシベリアでの抑留体験を持つ彫刻家の佐藤忠良氏の作品です。実体験からかロシアの風土を感じさせる作風、大きなかぶの重さを感じさせる力強い線には、彫刻家ならではのデッサン力が表れています。

ちなみに、ウィキペディアには「おじいさんが一粒のかぶの種を植えた。~(中略)するとかぶがぬけた。」までのあらすじが載っていますが、このあらすじの英文をAI画像生成サイトに入力したところ、まず、かぶのスケールが巨大なサイズになりません。それで、文章を編集して何度も試したのですが、どれも機械的というか、常識的な反応なのです。さすがに絵本のような常識を超えた世界観、また非合理的なストーリーを絵にすることは、AIにとって至難の業なのでしょう。

「生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展は、神奈川県立近代美術館 葉山で7月2日まで開催されています。「おおきなかぶ」の絵本原画を観ることができます。