夏休みの始めに
「今年の自由研究は「金継ぎ」にしたいんだけど、体験できるかな?」
と子供から相談がありました。なんでも面白かった小説に「漆」や「金継ぎ」などの伝統工芸のことが描かれていて興味を持ったとのこと。なかなか渋い趣味に驚きつつ、金継ぎについて調べてみました。

金継ぎとは、器の割れや欠け、ヒビなどの破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で修復する伝統的な技法のことで、縄文時代にも似たような技術が用いられていたと伝えられています。諸説ありますが今のような金継ぎ技術が誕生したのは今から400年以上前の安土桃山時代から江戸時代ごろ、「茶の湯」の時代といわれています。金継ぎして直した部分を「景色(けしき)」と呼んで愛でていたそうです。

夏休み中に開催予定のワークショップを見つけることができ、早速申し込んでみました。
今回は半日体験のため、接着は瞬間接着剤で行いました。接着面の耐久性はケミカルな接着剤は10年程度、天然の漆は約1000年(!)持つそうです。接着面が完全に乾くのを待ってから、はみ出している接着剤を丁寧に専用ナイフで削り、接着した部分に細い筆で漆を塗ります。
金継ぎに使用する金属粉には金、銀、錫、真鍮など様々な種類があり、使用する金属粉との相性を考慮しながら下地に使用する漆の色を決めていきます。湿度や材料によっても発色が変わるため、経験の違いが隠せない面白い工程です。慎重に漆を塗った後、漆の粘度を確認しつつ、化粧筆の柄の部分をトントン叩きながら金属粉を器の上に落としていきます。しばらく置いた後、真綿をくるくると回しながら余分な金属粉を払い、接着した部分の艶を出していきます。

金粉の下に、下地に使用した漆の赤色が透けて見えている部分もありますが、雰囲気のある一品に仕上がりました。
道具の扱いに緊張したようですが、ひとつひとつの工程の意味や漆、金継ぎの歴史を説明してもらうことで、昔の人たちが道具や食器をとても大事に扱ってきたことに感銘を受けたようです。

SDGs17の目標の12番目に「つくる責任 つかう責任」という項目があります。
何でも手に入りやすい時代だからこそ、楽しみながら「つかう責任」を果たすことができる金継ぎはとても魅力的な技法だと思いました。天然漆での修復には最短で約1か月かかるとのことですが、今度はこちらにチャレンジしてみたいと思います。