
在宅勤務の朝、仕事を始める前に必ずするのは、コーヒーを淹れることです。
おしゃれなエスプレッソマシンやコーヒーメーカーではなく、ハンドドリップでその時飲む分だけを淹れます。場所を取らず洗うのも簡単という使いやすさが良いところです。
ある日も行きつけの喫茶店で「いつものですか?」「はい、いつもので」というありふれたいつものやりとりをして帰宅。すぐに新鮮なコーヒーを飲みたくなり、待ちきれず袋を開けると、
いつもの、では、ない。
いつもの粉ではなく、豆のまま・・・!!!
お互い世間話に夢中になっていたせいか、マスターが豆を挽き忘れ、私も目の前にいたのにそれに気づきませんでした。
忙しい朝にせめてもの時短をと、粉を選んでいたのに。
どうしようかと一瞬呆然としたものの、しまい込んでいた頂きものの手動ミルがあったことを思い出し、早速使ってみたところ・・・おどろきました。挽き始めると豊かな香りに包まれ、淹れたてを飲んでみるとこれまでとは違う味。美味しい。
マスターに感謝しなければならないと思うくらい、嬉しい発見でした。
それからコーヒーは粉ではなく豆を選ぶようになり、毎朝豆を挽くことが日課になりました。
優雅な朝を想像させるかもしれませんが、忙しいことには変わりなく、時間に追われるうちに筋トレも兼ねた高速回転の技を習得しました。
また、眠いときはゴリゴリという音で覚醒し、イライラしているときは心を鎮める音になります。
考え事をしながら回しているとなぜか集中して整理できたり、頭がパンクしそうなときは無になれたりする不思議な時間です。
豆を挽きながらふと、コーヒーはなぜ「珈琲」と書くのだろうと思い調べてみました。
上島珈琲のウェブサイトの記事によると、幕末の蘭学者、宇田川榕菴(うだがわようあん)が「珈琲」という漢字を考案したそうです。
コーヒーの木の枝に実った赤い実の様子が、「かんざし」に似ていることからその漢字を当てたとのこと。
「珈」は髪に挿す花かんざし
「琲」はかんざしの玉をつなぐ紐
言葉ひとつでイメージを広げて彩りを与える翻訳とネーミング。
珈琲の由来を知ってから、芳しい茶色の豆を見れば赤い実を思い浮かべる楽しみができました。