ベランダで季節はずれのシクラメンが咲いている。
7月のとある真夏日に突如つぼみが開き、やがて枯れるだろうと思いながら水やりを続けていたのだが、枯れるどころかみるみるうちに葉がこんもり生い茂り、もう2か月近く次から次へとピンクの可憐な花を咲かせている。
「豚の饅頭(ブタのマンジュウ)」
これがシクラメンの正式和名である。明治時代に日本に紹介されたときに、球根が饅頭をつぶしたような形をしていることから名づけられたらしい。ヨーロッパでは豚が好んでシクラメンの球根を食べることから「豚のパン」という別名があるそうなので、その影響もあるようだ。
「豚の饅頭」と「シクラメン」
対象物は同じでも、ネーミングによって世界観がまるで変わってしまう。
真綿色したシクラメンほど
清しいものはない
・・・シクラメンのかほり(作詞・作曲:小椋佳)
「豚の饅頭」から「シクラメン」へと呼びかたが変わったのはいつ頃なのだろう。「豚の饅頭」がそのまま使われていたら、小椋佳さんのあの「シクラメンのかほり」という名曲は生まれなかっただろうし、シクラメンの売れ行きにも相当影響があったにちがいない。
ベランダではシクラメンが夏の終わりの光を浴びながら相変わらず狂い咲きしている。
私だったらこの花にどんな名前をつけただろう

* アラヤは一般社団法人 日本ネーミング協会の会員です。