ある大学の公開講座で、箭内道彦さんのお話を聞く機会がありました。

箭内さんと言えば、タワーレコードの「NO MUSIC,NO LIFE」や富士フイルムの「PHOTO IS」、リクルートの「ゼクシィ」などの広告を手掛け、福島の復興支援を目的とした「風とロック LIVE福島」を開催するなど、多方面の活躍をされているクリエイターです。さらには、2011年NHK紅白歌合戦に出場した猪苗代湖ズのギタリストでもあり、現在は母校である東京藝術大学のデザイン科の教授を勤められています。

公開講座で大学ではどんなことをしているのかという話をされた際に、とても印象的な話がありました。それは、デザイン科の2年生に「チャーミングに異を唱える」という課題を出しているという話。
「チャーミングに異を唱える」!!! なんて素敵な課題なのでしょう。

まず、第一に「チャーミングに異を唱える」という中身そのもの。
「異を唱える」の類似語を調べると、「疑義を唱える」、「物言いをつける」「待ったをかける」という言葉が出てきます。
私なんかは、声高に、「そうじゃない!」「ちょっと待ってよ~!」と叫んでいるシーンを想像してしまいます。

声高に相手を威嚇するような意見の伝え方は、新たな軋轢や分断を生む可能性があります。
今の世界情勢を見ても実感できるのではないでしょうか。
規模は違っても、自分の身近なコミュニティの中でも同様なことが起こっています。

しかし、頭に「チャーミング」が付くとどうでしょうか。
なんか、ちょっとクスッと笑ってしまうようなユーモアを交えて、相手に自分の意見を伝える、受け取るほうも緊張しないで素直に聞ける、そんなイメージに変わりませんか?
みんながチャーミングに異を唱えれば、人の意見に素直に耳を傾け、自分とは異なる考え方を受入れ、新しい気付きを得られる、そんな気になります。

そして2つ目は、「チャーミングに異を唱える」方法を考えることもデザインであるとおっしゃった箭内さんの言葉。
東京藝術大学のご自分の研究室の紹介に、「デザインは、綺麗な包装紙ではなく、社会の課題を解決するアイデア。困っている人を助ける仕事。今に足りぬ 必要なものを、謙虚に作り続けること。」と書かれています。
なんかすごく感動です。デザインの力を信じたくなります。


こうした「人を起点とした発想でものを考えること 」というデザイナーの視点こそが、昨今、よく言われているデザイン思考、デザイン経営の根幹なのだと思います。
デザインとは決してクリエイターやデザイナーだけのものではなく、すべての人のものである。改めてそんな思いを強くした次第です。
そして、一番大切なことは、人を思いやる気持ちなのかなあと。。

アラヤにおいても、今持っている技術や経験、知見からの一方通行の発信ではなく、お客さま、パートナーさま、社員同士、さらにはお客さまの先のお客さまと、信じあったりわかりあったりすることで、新たな視点・新たな価値を生み出せる企業でありたいと考えます。