11月28日、人間国宝の歌舞伎役者、中村吉右衛門さんがご逝去されました。

吉右衛門さんは、古典の継承にこだわり続け、播磨屋の芸を深化させた役者さんです。
朗々とした自由自在なセリフ術、地味ですが大きな芸風は唯一無二の存在で、円熟期を迎えた時期でのご逝去は残念でなりません。

歌舞伎にはいわゆる演出というものがありません。そのかわり、それぞれの家の「型」というものがあります。

「見得(みえ)」と言われる動作を一瞬ストップさせたポーズや、しぐさ、セリフの間の取り方、他の役者との位置関係、衣裳の色、表情など、代々の役者がその役の性格や心情を表すために時間を掛けて作り上げてきた工夫が「型」です。

この「型」をなぞれば、それなりにお芝居が成立するということになります。

しかし、役者は「型」を身につけ、さらに芝居を読み解き、自らの表現として「型」を超えていきます。歌舞伎を観る楽しみは、芝居のストーリーではなく、役者を観ることと言われる所以なのだと思います。

「型」はいうなれば、ルールをポーズ・しぐさ・セリフ・演出方法に落とし込んだ「ロジック」です。

それぞれの役者の役の読み解き・工夫・感性の表現はいわば「クリエイティブ」。
「ロジック」×「クリエイティブ」の調和が、歌舞伎が江戸時代から続く伝統芸能であり、今の時代の人の心にも響く所以ではないかと思います。

これは、歌舞伎に限ったことではなく、ビジネスにおいても同じ。
「ロジック」×「クリエイティブ」で新しい価値を創出するというのは、「デザイン思考」・「アート思考」のベースでもありますね。

吉右衛門さんが人生をかけて守り、極めようとした播磨屋の芸が後輩に引き継がれ、次の時代のロジックに深化することを信じております。

よ!播磨屋!!!大播磨!!! 長い間、お疲れ様でした。