WBC2023が終わってしまった。
参加チームは、予選が始まってから2週間にわたって私たちにたくさんの感動と興奮を与え続けてくれた。
印象に残ったシーンは数々あるが、なかでも私は準々決勝のイタリア戦で見せた大谷のセーフティバントが忘れられない。
イタリアに流れを持って行かれそうな気配のあった3回裏の攻撃。1死1塁で打席に立った大谷は、極端な守備シフトを敷くイタリアの意表をついてセーフティバントで出塁する。試合後のインタビューでこのシーンについて問われると、「リスクを回避しながら、ハイリターンを得られる選択をした」と話し、長打よりバントを選択したことについては「日本代表のチームの勝利より優先する自分のプライドはなかった」と語っている。このときのセーフティバントは、大谷の勝つことに対するピュアな執念と的確な判断力が如実に表れた名シーンだったと私は思っている。

大谷といえば、スター軍団であるアメリカを前にした決勝の試合直前にロッカールームで行なった声出しも話題になっている。
「憧れるのをやめましょう。・・中略・・・。憧れてしまっては超えられないので。僕らは今日超えるために、トップになるために来たので。今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう」
相手をリスペクトしながらも自分たちの戦意を鼓舞するこの言葉は、海外では以下のように訳されて賞賛されているようだ。
“Let’s stop admiring them. … If you admire them, you can’t surpass them. We came here to surpass them, to reach the top. For one day, let’s throw away our admiration for them and just think about winning.”

WBC2023を通じて、強者に立ち向かっていく勇気や最後まであきらめない気持ちに心が震い立ち、自分自身の生き方に影響を受けた人は多いのではないだろうか。少なくとも、明日への活力につながる尊い何かが私の中に宿ったことは確かである。